摂食機能療法の算定要件と効果的な運用

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摂食嚥下障害の患者に症状の改善・悪化防止のために行う医療行為全般を

「摂食嚥下リハビリテーション」という。

実際に患者に対して訓練・指導を行った場合の診療報酬項目の一つが「摂食機能療法」だ。

摂食機能療法とは

算定要件

平成26年に新設された本加算は、多くの医療機関で現在算定されている。

本加算の算定要件は以下の通り。

対象患者は、発達遅滞、顎切除および舌切除の手術、脳卒中による後遺症で摂食機能障害を有する患者に対し、診療計画書に基づき、医師または歯科医師、もしくはいずれかの指示のもとに言語聴覚士(以下、ST)、看護師、准看護師、歯科衛生士、理学療法士(以下、PT)、作業療法士(以下、OT)が1回につき30分以上訓練指導を行った場合に算定できる(月4回を限度、治療開始日より3月以内では1日につき算定可)。

訓練内容は、口腔器官の運動や筋力増強訓練、感覚的な刺激入力、誤嚥防止のための咳払いや排痰訓練、日常生活上必要な口腔ケアや食事動作訓練、嚥下直接訓練、介助方法指導など多岐にわたる。

一般的には看護師やSTが本加算の訓練を実施して算定するケースが多い。

また、歯科医師のオーダーで算定可能という面から歯科の領域でも算定を推進している。

リハビリの加算の課題

平成30年度診療報酬・介護報酬同時改定では、リハビリに関する改定はそんなに多くはなかった。

医療分野でのリハビリは、疾患別リハビリをはじめとする個別性が色濃く残っているのは言うまでもないが、介護分野についてもまだまだその色は褪せない。

個別という枠組みを見直して、柔軟かつ効果的なリハビリの提供を急ぐ声は少なくない。

話は変わって、なんとも言えない縛りが気になるものがある。

例えば、呼吸器リハビリに対して、STが介入できない縛り。

肺炎などの呼吸器疾患に対するリハビリだが、呼吸器リハビリと言うと急性期におけるPTなどのリハビリと言う印象が強いのだろうか?

そのため、特にかかりつけ医機能を持つ地域の中小病院や、有床診療所などにかかる患者では、実際には肺炎の患者の多くは誤嚥性肺炎であるのにもかかわらず、STがその患者をリハビリ(呼吸器リハビリ)できないという、なんとも言えない状態が続いている。

STは、脳血管等リハビリ、廃用リハビリ、がんリハビリのみしか行えない。

がんリハビリは研修受講が必須

誤嚥性肺炎の原因となった摂食嚥下機能の低下に対するリハビリを、その専門家であるSTが行うことができないというのは、呼吸器リハビリそのもののイメージが急性期のPTが行うリハビリのイメージしか、このルールを考えている方々にはないためでろうと筆者は想像する。

ちなみに、筆者が某医療機関在職中に厚生局の個別指導を受けた時、

「呼吸器リハビリなんだから、呼吸器に対する訓練をしないとダメだよ。この訓練内容や記録では運動時リハなんじゃないの?嚥下リハは違うでしょ?」

と激しく突っ込まれたのは記憶に新しい。

現行の疾患別リハビリの体制としてはこれが現実であり、そのことに文句を言っても仕方が無いので、早々にこういった患者に対しては嚥下内視鏡検査や嚥下造影検査を行い、STとしては摂食機能療法でカバーするしか方法がないのだ。

加算の変遷

そもそもの摂食機能療法の算定要件の詳細はこちらをチェック。

平成30年診療報酬改定情報

30分以上の場合 185点 30分未満の場合 130点(新設) [aside type="normal"] 改定…

摂食機能療法はこれまで色々な改定がされて来た。

最近では、

1 摂食機能療法の対象の明確化 28.4~
対象者
①発達障害、顎切除及び舌切除手術、脳血管疾患等による後遺症により摂食機能に障害があるもの。
②VF・VEによって他覚的に存在が認められる嚥下機能の低下で、医学的に効果が期待できる患者
2 摂食機能療法の対象の拡大  H30.4~
対象者
「脳卒中の発症後14日以内」の患者の場合、15分以上30分未満の場合でも算定可能。

 

さて、本加算の特徴や運用について、細かく考えていきたい。

本加算の最大の特徴である「複数の専門職が算定可能」という点に注目したい。

医師をはじめ、歯科医師・歯科衛生士、他のリハビリ専門職であるPT・OTが本加算を算定可能のため、

運用の仕方によっては非常にニーズに合致し効率的な訓練の提供が可能だ。

上肢の可動域制限があり食事の自己摂取が進まないケースを考えてみる。

このケースの場合、通常リハビリではOTへオーダーが入る。

OTが本訓練を提供するには「疾患別リハビリ」か「摂食機能療法」かのどちらかとなる。

「疾患別リハビリ」を選択すると、

患者一人当たりに提供できる上限単位数(6単位、一部9単位までが上限)から2単位(40分)ほど充てることとなり、食事訓練以外の疾患別リハビリ提供時間が減ってしまう

つまり、食事時間に疾患別リハビリとして2単位介入し食事動作訓練を実施すると、

他のPTの歩行訓練やOTのトイレ動作訓練などのiADL訓練を提供する疾患別リハビリの単位数に

制約を受けるのだ。

よってここで「摂食機能療法」を活用したい。

摂食機能療法の効果的運用

これは、1日30分以上の介入で算定ができ、なおかつ治療開始から3か月毎日算定できる。

仮にリハビリスタッフのマンパワーが少ない場合は、

その訓練方法を看護師等に指導し行ってもらうこともできる。

つまり、医師をはじめ、多くのスタッフが患者の摂食嚥下障害へのアプローチにあたることができるのだ。
そして本加算の算定期間が治療開始から3か月間毎日可能という点も重要だ

脳血管疾患等による後遺症で摂食機能障害を有する患者や、

嚥下機能検査(嚥下内視鏡検査、嚥下造影検査)を実施し嚥下障害を診断された患者に対しては、

土日祝日も含め毎日訓練が必要なケースがほとんどで、

それを多職種で提供することができるという点は「疾患別リハビリ」とは大きく違うのだ。

365日リハビリスタッフが勤務する病院は、今でこそ全国的に当たり前になりつつあるが、

日曜日や祝日が休みの急性期病院や有床診療所なども多い。

平日はリハビリスタッフが主に摂食機能療法に関わり、リハスタッフが休みの日は看護師が介入するスタイル、なども可能だ。

摂食機能療法の運用上の課題

このように運用面で色々なパターンが可能で良い面も多いが、当然課題もある。

一つ目は、ハードの課題だ。

ハードの課題

誤嚥性肺炎などによって入院してきたケースで、過去に脳卒中の既往が全くなく、

医療機関に嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査の設備がない場合だ。

その場合は、本加算を取るのは難しい。

外部の連携病院や医師に委託して、これらの検査を外付けで行っているところもある。

また、急性期病院からの転院であれば、転院前にこれらの検査を済ましてもらうよう調整することも必要だ。

二つ目はソフトの課題だ

ソフトの課題

病棟ごとに「本加算のリーダーシップを誰が取るか」ということを明確にする必要性がある。

「疾患別リハビリ」は当然リハビリスタッフがイニシアティブを取る。

しかし「摂食機能療法」は多くのスタッフが算定できるという特徴からも

「取りまとめ役がいないと烏合の衆になってしまう」恐れがある。

つまり、医師または歯科医師の指示のもとに、

現場をしっかりとリードするスタッフを誰にするかが、

効果的かつ継続的に運用する鍵となる。


A一般病棟では「全て看護師で算定」している。
B包括ケア病棟は「全てSTで算定」している。
C有床診療所は「看護師とリハビリで日替わりで算定」している。

どれが良いかは正直それぞれの職員の配置状況によっても異なる。

STがそもそも配置されていない病棟では、看護師やPTなどが算定せざるを得ないため、

摂食嚥下障害にある程度詳しいスタッフがどうしても必要になる。

つまり、それぞれの病棟でキーとなる職員を誰にするかを決定しないと、

この加算はなかなか前に進まないのだ。

摂食嚥下認定看護師の配置があれば「全て看護師」もやりやすい。

 

併せて読みたいH30年度の同時改定の「摂食嚥下に関する事項」の整理

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経営的側面

これらハードとソフトの課題を整理していくと、非常に有効なリハビリが提供できることは言うまでもない。

経営面でも、

患者一人当たり毎日185点、30日で5,550点の算定は大きい。

仮に40床の病棟で2割の8名が対象であれば、この8倍が出来高となる。

「8名も同時に昼食時に見られない!」

と病棟から反発もありそうだが、決して「昼食」だけで算定しなくて良い。

「朝食」「夕食」などでも良いし、もちろん食事時間以外にも訓練は可能だ。

この加算を通じて、どのようにその患者の摂食嚥下機能の改善や、

「食事」という大きな生活の質を改善できるかを考えていくと、実は職員の働き方にも視点が移る

食事場面を評価することが忙しくてできない、という医療機関の多くは、

リハビリスタッフや看護師の勤務が9時から18時の勤務が中心であり、

その場合は「昼食」のみに視点が置かれる。

職員の働き方にもブレークスルーが必要で業務改善の余地は大いにある。

また、

多くが包括化される地域包括ケア病棟でも、本加算は包括化されず出来高算定できる。

さらに、摂食機能療法をさらに積極的に進めていくと「経口摂取回復促進加算」という、

「加算の加算」も準備されている。こちらのハードルはやや高いが、目指すべき目標となり得る。

 

改めて算定要件をチェック。

平成30年診療報酬改定情報

30分以上の場合 185点 30分未満の場合 130点(新設) [aside type="normal"] 改定…

 

今や誤嚥性肺炎は死亡原因の第3位にまで位置する、重要な疾患であることは言うまでもない。

誤嚥性肺炎が摂食嚥下障害の大きな要因の一つであることからも、

その改善に積極的に取り組むことが急務である。

まとめ

1 摂食機能療法は複数の専門職で算定が可能であり、治療開始から3ヶ月間は毎日算定が可能
2 運用次第で、継続的かつ効果的な摂食嚥下障害への介入が可能
3 ハードとソフトの問題をクリアするとより積極的に算定ができる
4 さらにその上の加算「経口摂取回復促進加算」も視野に入れてトライする

 

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今まで医療機関の経営企画室長と事務長、現場のリハビリリーダーを3つ兼務し、これまで50以上の業務改善を3年くらいで行ってきました。業務改善の内容は大なり小なりありますが、少しでも読者の皆様の参考になって頂ければと思います。

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