最近、このインタビュー企画もご無沙汰してしました。
また心機一転、ゆっくりと再開していきたいと思います。
是非、多くの方々をインタビューして行きたいと思いますので、是非、皆さま応援お願いします!!
これまでの他の方々のインタビュー記事はこちらから!!
それでは、本日のインタビューは、言語聴覚士「井立 由紀」さんです!!

経歴

麻生リハビリテーション専門学校(現:大学校)を卒業後、熊本県の病院に5年間勤務。主に療養病棟を担当し、回復期リハ、小児外来リハにも携わっていました。
その後、青年海外協力隊に応募し、合格。バングラデシュに2年間派遣され、イギリス人が設立したNPO病院にて活動していました。
帰国後、大阪の回復期リハ病院に勤務。現在、言語聴覚士・歯科衛生士チームの副主任をしています。
青年海外協力隊に参加するきっかけや活動内容
派遣前の活動


1次審査は履歴書のような書類と健康診断書、英語の試験の結果(TOEICや英検など)を送ります。2次試験は面接でした。合格すれば、合格通知に派遣国が書かれています。そして派遣前訓練を70日間受け、その後各国に派遣されます。
私は2013年6月にバングラデシュに派遣されました。
派遣前訓練って実際にはどんなことを行うのですか?



派遣先での活動





後は周りがSTばかりなので、発音や文法は直してくれました。日本語にはない発音があるんです。スタッフは「失語症患者」のように対応してくれてたんじゃないかなと思います(笑)スタッフたちの言語訓練のおかげで、2年間で軽度失語症くらいにはレベルアップなったのではないかな。
訓練の実際は?


なるほど。こちらの訓練と同じ印象ですが、訓練資材がなかったり言葉の壁だったり、色々とここでは語り尽くせない苦労があったかと思います。
臨床以外ではどんなことを行っていましたか?



さて、では日本に帰国してからの活動も伺いましょう。

帰国後の活動
今の職場・法人の特徴はなんでしょうか?

当院の特徴としては、世界でも珍しい喀血のカテーテル治療を行なっており、その件数は世界でもトップレベル。回復期リハは南大阪では最大の病床数、大阪内でも4番目に多い病床数です。
リハ部の特徴として、VRやReoGoの最新機器が取り揃っており「根拠に基づいた攻めるリハビリテーション」を理念に、EBMを実施しています。多数の研究チームがあり、大学院進学者も多く、意欲的なスタッフが多いです。
スタッフ総数は120名と多く、部門長は30歳代、平均年齢も20歳代と若くて元気があります。部署間は仲がよく、これだけの人数がいるなか、派閥はありません。
言語聴覚士・歯科衛生士チームも10名以上いますが、和気藹々で、プライベートでもよく飲みにいったり、遊びに行ったりしています。私も今年、主任とUVERworldのライブに行きました(笑)

回復期リハの魅力と、他のステージでの役割の違いについて


小児外来ではどのようなリハビリをされていましたか?

回復期リハで得られることは本当に多かったのでは?



バングラデシュで活動していた当時は、言語療法は立ち上げから10年目。一番長い経験者でも5年目で、有資格者は60名、資格が取れる学校は1校のみ。海外からの講師を呼んで授業が行われることが多いため、教科書や授業は英語で行われます。また検査道具がないので、授業で検査を翻訳し、作成すると聞きました。初回スクリーニングではWABを使用していましたね。

教育格差や教育の内容についても諸外国ではまだまだ課題も多いのでしょうか?


言語聴覚士の七つ道具の一つである「絵カード」は全くなく、スタッフ個人が手作りしていましたが、わかりにくい絵ばかりでしたし、個人で作っているため、スタッフ間で訓練内容に差が出ていました。
小児用のおもちゃも同様で、中国性のプラスチックのおもちゃはありますが、プラスチック製品は高く、訓練道具として使えるものが少なかったです。
いろいろと「ない」ことが多く、「ないなら自分で作る」ことが多かったですね。

日本は多くの先輩方が道を開いてくれており、教科書も検査道具も、訓練道具もお金を出せばあります。わからなかったら尋ねる相手もいます。学べる場も多いです。英語ができないから学べないということはありません。
この日本での環境が当たり前ではないことを痛感し、日本で言語聴覚療法の道を広げてくださった先輩方の偉大さを感じました。
KoKoRoコミュニティに参加されたきっかけや想い・目標は?
この度、2020年4月からスタートした弊社のKoKoRoコミュニティですが、その第1期生として募集して現在も活動して頂いております。そんなに大々的に広報した訳でもなくSNSで広めていたくらいですが、その参加のきっかけなど教えてください。

失語症友の会を立ち上げるにあたって、何をどうすればいいかわからなかったので、Facebookで言語聴覚士のグループに相談し、萩野さんとつながったことがきっかけです。萩野さんにKoKoRoコミュニティを紹介していただきました。
言語聴覚士をやめようかと考えていたときに、知人に「言語聴覚士はもういいやと思うくらい、極めたの?極めてからやめても遅くはないんじゃない」「言語聴覚士はあなたにとって天職のように思えるよ」と言われたのがきっかけで、認定言語聴覚士を目指そうと思いました。
失語症友の会を立ち上げることも目標ですが、認定言語聴覚士になることも目標としています。
ちょうど、このコミュニテイのプロジェクトで「失語症友の会の設立を支援する」という企画がありました。その活動の中心が、すでに愛知県で多彩な活動をされている萩野先生です。その出会いは貴重ですね。

失語症友の会の設立への熱い想いは?

回復期リハを終え、退院される患者さんやご家族さんに「今後も訓練ができる機関はないのか」「年齢も若く、デイケアには通いたくないけど、人との交流は促したいがどこかいいところはないか」と尋ねられることが本当に多いです。当院や周辺の機関では、外来での言語訓練や交流できるところは少なく、案内できないことを申し訳なく思っていました。
バングラデシュで経験した「ないなら自分で作る」しかないことを思い出し、失語症友の会の設立を決めました。
本当にすごい活動力ですね。それらアグレッシブな活動の原動力はなんでしょうか?

自分の性格や趣味などは?

自分の性格ですか(笑)けっこう人見知りです。中学・高校不登校で、中学は児童相談所に通っていました。同じ歳の子が、同じ空間にたくさんいて、同じ服をきて、同じことさせられることにやや違和感をもっており「早く大人になりたい」と思っていました。専門学校時代以前の友人とはほとんど繋がりはなく、社会人になってからの友人の方が多いです。
僕も人見知りです。だから本当はコミュニティとか苦手なんです。
こんな話をすると「またまた〜」って言われるのですが、よく知っている人からすると「コミュニティ作っただけでも一歩前進だね」って言われます。


私は負けん気と好奇心は人よりも強いですが、飽きることも多いです。あとは人より疲れやすく、周りの顔色を気にしがちです。何かに興味をもって、根詰めて取りかかり、バタンと倒れることが多いですね。
最近「HSS型HSP」という言葉を知り、人の目を気にしすぎてしまうこと・体力や気力を調整して使えないことは、気質なのかもしれないと思うと、ちょっと楽になりました。

趣味は読書とタヒチアンダンスです。小さい頃から本を読むことが大好きです。自己啓発本も読むことは好きですが、尊敬するコンサルタントの方にどんな本を読んでいるのか尋ねると「心が豊かになるような小説を読みなさい」と言われてからは、あまり自己啓発本は読んでいないですね。原田マハさん、東野圭吾さんなどの本を読んでいます。

打楽器や音楽に合わせて、大胆な動きと早いテンポで踊ります。フラダンスとちょっと似ていますね。女性は腰に、男性は足の動きに特徴があります。衣装はフラダンスのような感じですが、布の面積がとても少ないですね(笑)

仕事の時間の使い方で工夫されていることは?また普段はどんな時間の使い方をしていますか?


そうですね。客観的に自分を見たり、分析していかないと難しいですしね。「できない自分」を直視しないといけなくなるから、できれば考えたくないし、逃げたくなる!でも成長するためには「自分のキャパを知る」って大事ですよね。
あと私はたくさん寝ないとパフォーマンスが落ちるので、10時半にはベッドの中に入って、7時間は寝ています。なので、テレビをあまり見ないようにしていますね。テレビをつけているとあっという間に2時間くらい過ぎてしまうので。テレビの代わりにラジオや音楽を流しています。平日でもお風呂に浸かって読書をしたり、勉強したりしています。

リハビリ職のスキルアップについて

高次脳機能分野の認定言語聴覚士を目指しています。学会発表も経験がないので、挑戦していきます。今年は回復期リハビリテーション学会で、初めて発表する予定でしたが、コロナの影響で中止になりました。残念です。
あとは日本語以外の言語に対応した言語聴覚士を目指すのもおもしろそうだなと思い、KoKoRoコミュニティで英語の勉強もさせてもらっています。

以前ろう者の方を担当させてもらったときに、手話版WABを作って楽しかったですね。同じように多言語に対応できる何かを作り上げたいなと思っています。
普段の臨床で特に大事にされていることは?

「患者さんは自分の家族と思いなさい」と先輩に言われたことを今でも大事にしています。「患者さん」ではなく「人生の大先輩」なので、よく人生相談をして、たくさん教わっています。
また信頼関係も大事にしているので、フリートークの時間も大切にしています。自分が楽しくないと相手も楽しくないと持っているので、基本的には、自分が「おもしろい、興味深い」と思うような訓練をしています。

失語症の女性の方で、反響言語(おうむ返し)や「よかよか」の残語がほとんどの方でした。トイレの訴えができればと思い「トイレ」と言う練習をしていました。ある日、訓練中に、患者さんが突然「便所!!」と言った顔と声を今でも覚えています(笑)患者さんの言語環境を知らないと、訓練の意味をなさないんだなと感じました。
また同じ患者さんですが、フリートーク中に私が「今日は職場の飲み会です」と話すと「一番、誰が飲むとや?」と突然発語できたことに、私も言った本人も驚き、2人で喜んだことが印象に残っています。その後、ご家族に「最近、私が本を読んでいると「何の本読んどーと?」と言葉が出たんです」と報告を受け、言語聴覚士やっていて良かったと思いました。
それは嬉しいですね!!
学生の時にやっておけば良かったことはありますか?

もっと真面目に英語の勉強しておけばよかったーってちょっとだけ思いますが、人生に始めるのに遅いことはないので、あまり「やっておけばよかった」と感じることはないですね。
子供の頃の自分に言ってあげたいことは?

人のいうことをあまり聞く子ではなかったので、聞いてくれないと思いますが(笑)
「鬱っぽくなってしまうのは、夜早く寝て、朝早く起きないからなのと、女性特有の生理現象だよ」というくらいでしょうか(笑)親に心療内科に連れて行かれたくらい精神的に落ち着かなかった時期が長かったです。
自分よりも両親に「心配しなくても、立派な社会人になれますよ」と言ってあげたいです。
素晴らしいですね。
自分の5年後・10年後はどうなっていると思いますか?

仕事の他に何か楽しいことをやっていてほしいです。それが失語症友の会だと良いなと思います。大好きな人たちと楽しいことをワイワイしていたいです。あとダンスがもう少し上手になっていますように!
5年後、10年後、自分は何をしていて、どこに住んでいるのか、考えるとワクワクしますね。
最後に若いセラピストに向けて一言!

人生一度きりですし、私たちは日本人ですが、地球人でもあります。世界を知らずに、死ぬのはもったいないかなと個人的に思います。もちろん日本のことも。いろんなところに行ってみてほしいなと思います。
あとは失敗を恐れずに、何にでも挑戦して欲しいですね。
力を抜いたトーク・・

いろいろとまじめに書きましたが、全然普通の人です(笑)記憶がなくなるまでお酒飲んじゃいますし、恋愛運ありませんし、鼻ピアス開けてますし、田中みなみみたいになりたいと思っています。愚痴もめちゃめちゃ言います。ダイエットも三日坊主です。KingGnuの井口さんのラジオで下ネタを聞いて、ニヤニヤするのが好きです(笑)一人じゃ何もできません。周りに頼りまくっています。
私がいろいろ挑戦できるのは、周りの方のおかげです。
活動していたCRPは常時、海外ボランティア(短期・長期)を募集しているので(見学やインターンも可)、興味がある人は案内しますし、直接問い合わせてもいいかと思います。
今回のインタビューも甘利さんが上手に質問をしてくれていたので、回答しながら「私、なんかすごい人みたいになっているなぁ」と思いました(笑)
友人がこれをみたら、笑われそうです。
そうかもしれませんね。でも改めてこうやって整理すると、みなさん本当に素晴らしい方々だと改めて思います。
素晴らしいインタビュー、ご協力ありがとうございました!!
編集後記
自分の良いところ、悪いところを知っている人って、どれだけいるだろうか?
自分のキャパを知っている人はどれくらいいるだろうか?
意外に少ないのだと思う。
もちろん無理をし過ぎないというのは大事だが、自分の限界点のかなり手前に限界を設定してしまうことで、
新しい可能性や、チャレンジができなくなってしまうこともある。
井立さんは、自分を知り、そして自分に正直に毎日を生きている。
世界に飛び立ってきたその勇気と、さらなる飛躍のための日々の努力を惜しまない。
自分に向き合い、そして努力する。
それは「あたり前」なことかもしれないが、一番「難しい」のだと思う。