自分に厳しく他人・家族に優しく。 スキルアップをとことん追求する 若手向けセラピストインタビューVol.18-2

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第1回に引き続き「理学療法士 冨士野 秀峰 氏」のインタビュー記事の第2弾になります!

冨士野さんの第1回目の記事や、これまでの他の方々のインタビュー記事はこちらから!!

インタビュー リンクまとめ

 

〜第1回目の続き〜

 

地域活動

積極的な地域活動

甘利
地域活動を積極的にされていると伺っていますが、どのような活動をされているのでしょうか?
冨士野氏

院外の活動として、以下の様な活動を行っています。

1 「体操教室を主催、スポーツ現場・転倒予防教室の講師」

2 「自治会体育推進委員」として地域住民に対するスポーツイベント企画運営

3 「地域づくり推進委員」として、環境保全、祭りやイベントの企画・準備・運営

甘利
色々と行なっていらっしゃいますね。具体的にはどのような活動なのでしょうか?
冨士野氏
まず「1」ですが、体操教室を開催し、対象者の健康で心豊な生活を応援する活動を行っています。
成人を対象に、健康運動体操教室を開催、また高齢者を対象に地域の転倒予防教室の講師として定期的に体操指導を行っています。
また子供を対象に外部より講師を呼んでスポーツリズムトレーニング教室を開催、依頼に応じてスポーツ少年団に対するウォーミングアップ・トレーニング指導を行っています。職場のリハスタッフと共にマラソン大会でブースを設けてランナーサポートを行っています。
甘利
なるほど。これらのきっかけは何だったでしょうか?
冨士野氏

子供を対象の活動の始まりは、自分の子供に良い環境で良いトレーニングを受けさせたいという子を思う単純なスケベ心が始まりです。体操教室も、家族に健康で心豊かに過ごしてもらうためには何が必要か…と考えたのが始まりです。

今では地域の皆様の健康に対する自助努力の重要性、子供の運動能力向上に対する理解が徐々に広がり、多くのリクエストをいただくことが事業継続の原動力となっております。

甘利

お自身のお子さんを第一に考えていき、それから地域に発展していくというのは、確かに珍しいかもしれませんが、面白い発想ですね!

それだけ家族をとっても大事にされている。「2」の自治会はいかがでしょうか?

冨士野氏

「2」は、自治会より依頼を受け、地域住民を対象としたグランドゴルフ大会や小学生対象とした体育イベントを企画・運営しています。自治会より予算を受けた事業の為、イベント参加の地域住民が喜びそうな景品を用意して開催しております。グランドゴルフ大会は参加者が80名を超える時もあり、そんな大会の総合司会は大変緊張もしますが、地域住民の温かさに甘えながらなんとか行っております。スポーツイベントを通して、自助努力による健康維持を促す言葉も間に挟みながら実施しています。

甘利

自治会の予算が割り当てられているというのは、非常に地域でも期待が高いという証拠ですね。素晴らしい活動だと思います!それに自助努力はこれからの本当にキーワードだと思っています!最後に「3」はいかがでしょうか?

冨士野氏
はい。地域活性を目的に、まちの環境保全の為の整備活動や、地域の祭りやイベントの企画・準備・運営を行っています。
甘利
本当に多彩な地域活動をされているのですね。なかなか普段の業務とこれらの地域活動を並行して行なっていくのは大変です。ぜひ、またそのノウハウをお聞きさせてくださいね。

国体サポート

甘利
国体サポートをされていると伺っていますが、具体的にはどのような活動をされているのでしょうか?
冨士野氏

2024年に滋賀国体が開催されます。その中で、各種目の会場・チームに、一定水準以上の医療・スポーツの知識と技術を備えた人材を派遣できることを目的とし、滋賀県理学療法士協会、滋賀県コンディショニング部会の協力を得て、研修会・技術講習・スポーツ現場での実習を開催しております。

甘利
なるほど、そんな活動が実はあるんですね〜
冨士野氏
滋賀県では、全カリキュラム修了者を対象に筆記試験・実技試験を行い、合格者のみ現場へ立てるといった流れを作りながら運営しております。
甘利
オリンピックにしても、国体にしても、ある一定のスキルに裏付けされた大会サポートは、これからも求められていきますね。

仕事の時間の使い方で工夫されていることは?

冨士野氏

今は業務の傍ら、認定試験受験の為に週に21時間勉強することを目標としている為、時間の使い方の改革を進めています。

特に朝と昼休みの時間の使い方には気を付けています。朝は早起きし、一日の予定を確認します。昼休みは、基本的に3時間あるので、その時間の使い方に気を付けています。

行っている事は2つ。
緊急度・重要度に分けてリストを作成
目的と終わりを思い描いてから作業を開始

この2つのステップにより、やり残しが無くなり、気がかりが無くなった状態で勉強に専念できるようになってきました。

甘利
なるほど。緊急度や重要度の整理は本当に大事です。目的と終わりをイメージしたスタートは確かにブレにくさを担保してくれていると思います。
冨士野氏
最初は勉強をしっかりする為に始めた行動だったのですが、これが思った以上に効率的に働ける、タスクをこなせる、そして気持ちが良いことに気が付きました。資格試験を終えても続けたいと思っています。

臨床現場

普段の臨床

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時間の使い方も素晴らしいですね。そんな濃密な毎日の中で、普段の臨床上特に大事にされていることはなんでしょうか?
冨士野氏

只今(ただいま)。今は今しかない。今、置かれた場所で精一杯生きる。

和敬清寂。和やかに、他人も自分も敬い、清らかに仕事をする。

まずは理解に徹する。しっかり聴く事。

甘利
なるほど。
冨士野氏

只今、和敬清寂を胸に刻み、しっかり聴くことを意識して仕事に臨むようにしています。そして先入観に注意をはらいながら仕事を行っています。

先入観に注意をはらうとは具体的には、過去の成功体験・過去に得たベースとなる情報・多くお金を払った講習会などの事柄・最近触れた情報等を重視していないか、自説に有利な情報のみを収集していないかを、自らを振り返りながら臨床に臨んでいます。

甘利
そうですね、いつの間にか先入観というものが正しい判断を歪めてしまう恐れがある。それを冷静に捉えて日々臨床に当たっていく。驕りを排除するとも言えるのかしれませんね。素晴らしい考えだと思います。これまでで一番印象的であった臨床はなんでしょうか?
冨士野氏

ガッツポーズをしたくなる瞬間はたまに訪れますが、どれが一番となると難しいです。

治療介入を行い、その場で「痛みが減った、無くなった」と聞くことはもちろん嬉しいですが、私と関わることで「この間言っていたアノ目的が達成できた、これからの生活が明るくなった」と笑顔で報告される瞬間が最高に嬉しいです。

甘利
冨士野さんの臨床は患者さんの「人」として、またその方の「生活」にしっかりとフォーカスをされているのだと思います。だから先ほどもあったような注意点を常に反芻しながら、そして短絡的な感情に流されることなく、自分の「正義」と常に照らし合わせて日々臨まれていると感じました。

学生の頃を振り返ると

甘利
学生の時にやっておけば良かったことはありますか?
冨士野氏

一言でいうと冒険。自転車で日本一周旅行や、貧乏旅行で良いので海外旅行をする。世界の声を聴く努力をする。

甘利
海外旅行はみなさん本当に口を揃えて「やっておけば良かった」と言われますね。僕もそう思いますし、僕自身も今でも海外に目を向けてこなかったことを悔やみます。これからでも、もちろん遅くはありませんが、早いということは色々と良いことも多いですね。でも第1回でも冨士野さんのこれまでの生活歴を伺いましたが、ご自身の性格と趣味などはいかがでしょうか?
冨士野氏

趣味は家族と過ごす事。あとはヨガ・メディテーション・マラソン(ハーフ1h35min)・ファスティング・筋力トレーニング・写真です。

性格は、猪突猛進するゾウの様な人間。温厚で優しく、多くの事に関心し、大体感動します。耳は優れ広く深く聴く耳があり、鼻も利き楽しいこと・怪しいことへの嗅覚に敏感。いったん目的に向かって進みだすと、わき目もふらず真直ぐに進むので、色々踏んづけたり・ぶつけたりして、悪気無く人を傷付けることがあります。

甘利
冨士野さんは、自己分析が本当にしっかりとされていますよね。素晴らしいですし、何より趣味に「家族と過ごすこと」というのが筆頭で上がるところが素晴らしいです。それに「ゾウ」の様な性格という表現は好きですね。自分を知るということは全てにおいて第一歩なんだと思います。
冨士野氏
そうですね。自分を知ることは本当に大切ですよね。普段生じている様々な「行動」や「感情」も自己分析していくと、過去の思い出や、先入観や、「こうあるべき」といった思い込みが根本となっていると感じています。その自己分析・自己理解が進むと、他者理解にも繋がると思います。

子供の頃を振り返って

甘利
子供の頃の自分に言ってあげたいことはなんでしょうか?
冨士野氏
結構遊んでいるようですが、まだ足りません。人の顔色ばかりに気をせずに、もっと自分のやりたいことを思いっきりやって下さい。自分も他人も敬いながら思い切りです。死ぬこと以外カスリ傷です。
甘利
「死ぬこと以外かすり傷」。そうですね、特に日本はセーフティーネットが整備されている。チャレンジはいくらでもできる。そう思います。逆に自分の5年後・10年後はどうなっていると思いますか?
冨士野氏

5年後は笑っています。10年後は笑っています。

5年後は自分が豊かであり、家族が豊かであり、コミュニティーを豊かにするべく活動を行っています。

10年後は、さらに豊かさを追求し、自分も家族も豊かになっており、そして街を豊かにする活動を行っています。

甘利
ちょっと感動です。本当に冨士野さんの心の中心が綺麗すぎて、僕の淀んだ(笑)心を癒してくれています。目標とさせてくださいね!

最後にご自由にどうぞ

冨士野氏

セラピストがあなたのアイデンティティ(個別性)のすべてになってはいませんか?

または、ただお金を稼ぐだけの行動になっていませんか?

 

私は、セラピストは「世界一良い職業」だと考えています。

責任は伴いますが、人の役に立つ仕事に出会い、その職業についていることは素晴らしいことです。

あなたは、少しでも患者さんに貢献する為に、日々の業務を一生懸命行い、夜や空いた時間に勉強を、休日も講習会に参加しているかもしれません。しかし、セラピストがあなたのアイデンティティ(個別性)のすべてになってはいませんか? 

もし、あなたのアイデンティティがセラピストであることが全てであると、仕事が思うようにいかなかった日は、自分を責め、家に帰っても気分がすぐれないでしょう。休日もセラピーのことを考えるでしょう。話を聞いて欲しいだけの家族や友人にもすぐに解決策を提供しようと努力してしまうでしょう。

また一方でやりたいこと、楽しいこと、を追及しているだけでは、考えが浅はかです。やりたいこと、楽しいことに加え、大切なことも重要視してください。刹那的な快楽や、周りの意見に振り回されないで、自分が本当に大切にしたいこと大切にしてください。

セラピストは「世界一良い職業」です。

自分を敬い、他人を敬える人が、いい仕事をします。なので、自分も大切にしてください。

スキルアップに関して、先輩や、情報ツールから、大量の情報が手に入る時代になってきました。情報の質に関しては受け手側の情報処理能力次第で大きく変化します。同じ講習会に参加しても、同じメールマガジンを読んでいても、同じKoKoRoステーションの秀逸なブログを読んでも、翌日からの臨床与える影響は個人ごとで違うことが多くあります。

私は、情報と触れ合うとき、前提条件として何を目的としており、どのような立ち位置で、どのような精度で、どのような先入観越しに物事を捉えているかを認識し、その認識の上で情報と触れるように気を付けています。情報に溺れるのではなく、良い情報を嗅ぎ分け、上手く情報を使う者になりましょう。KoKoRoステーションは絶対読むべきです。

 

一方でお金を稼ぐだけの行動になっている人。それはある意味正解かもしれません。これからますます情報化がすすみ、AIが人を超える時代が来ると言われています。今後の時代から近い未来、未来の働き方の形は変わるだろうと言われています。無くなる職業がいくつもあり、価値が下がる資格・職業もある様です。

私は、これからの時代に、生きていける力とは

1. 本質的な力を持つ
2. 世の中の流れに柔軟に適応できる者  

という意見には納得できます。つまり…「えぇ、別にどこに行っても生きていけるんでいいっすよ。」と笑って言える感じの人です。

生きる方法とは、目的を達成する為の手段を持つこと。その生きる目的とは、自分の根本の欲求を満たす事です。つまり生きる目的は根本の欲求を追及しないと分かりません。手段自体は考え方・在り方・稼ぎ方・職業等いくつも有り、セラピストであることも1つの手段としてあります。

心からセラピーが好きなら、そのセラピーをするという欲求が目的になり、セラピストで在ることが手段になるでしょう。しかし、根本の欲求(目的)が他にあり、今の職業がお金を稼ぐ為だけの手段なら、今の職業の価値は低下していくかもしれないので、時代に適応できる準備が必要かもしれません。今できることは自分の心と向き合い、根本の欲求を探ること。職業を縦断しても「一つの目的の為にやってるだけですよ」と言える、生き方を確立することです。

私の場合、本質的な欲求は「自分と家族のココロとカラダの健康で豊かな生活の継続」です。つまりは毎日家族と笑顔で食卓を囲んで美味しいご飯を食べることができれば満足です。(身心の健康・経済の安定・環境の安定)。

その為には自分と家族の心身の健康、住環境、地域環境、日本の環境の維持・改善が必要なので、それを改善すべく活動しています。

 

なんとなく未来に不安を感じる時、それは立ち止まり心と向き合うチャンスです。是非、「私の本質的な欲求は何?それに向けてどう行動する?」と自分に問いかけてみてください。

 

まとめますと、別にどこに行っても生きていけるんでいいっすよ…と言える、本質的な力と柔軟性と適応力を身につけましょう。これだけは譲れないという目的(本質的な欲求)を明確に持ちましょう。その目的に向けた行動をとりましょう。

自分を大切に。これからの時代を共に歩きましょう。

 

甘利
これは、本当に素晴らしい内容です。いろんな人にお伝えしたい内容です。今日はこの様な機会で冨士野さんにお話を伺えて本当に光栄です。今日はありがとうございました!
冨士野氏
長々と失礼しました。こちらこそ、ありがとうございました!!

 

編集後記

冨士野さんは「心」に問いかけてくれる。

だからどの言葉も、ズシっと響いてくる。

それは「人」というものを多面的にかつ綺麗な眼で見ているからだろう。

忙しいとか、疲れたとか、言い訳は誰でも簡単にできる。

その言い訳から、本来一番大切な家族や周りの仲間たちに攻撃的になってしまったり、

さらに自分の苦しさを助長する様な「負のスパイラル」に自ら追い込んでしまうことがある。

でも、どうだろう?

「自分」という「人」を一番知っているのは「自分」であり、もしかしたら一番知らないのも「自分」かもしれない。

だからいつも笑顔で自分と向き合い、それが他者へ伝わっていくのではないだろうか?

いたわるべきは「自分」。

それが前を向く、辛さや苦しさから逃げない心を支える、一番の方法なのかもしれない。

 

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