心の奥底にある熱い想い・物事を俯瞰する冷静な頭 若手セラピストインタビューVol.16

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今日ご紹介する「こまつ」さんは、以前僕も講師をしているセミナーに参加頂いたり、個別でもSNSをはじめ仲良くさせて頂いている方です!

上でも紹介しています「メディカル・フォーシーズ」にもご参加いただき、思考トレーニングをして頂いています。

 

実は16回目にして初めての作業療法士さん!!

それも20代と若い!楽しみです!!

 

これまでの他の方々のインタビュー記事はこちらから!!

インタビュー リンクまとめ

 

それでは、本日のインタビューは、20代 作業療法士「こまつ」さんです!!

 

Vol.16 京都府在住 作業療法士
20代   こまつ  

Twitter: @k_komatsu_02_ot

経歴

これまでの勤務経験は?

こまつ氏

大学卒業後、京都府の病院に勤めています。臨床経験は6年目です。病院専従で2年、病院と訪問を兼務で1年、その後訪問リハビリ専従となりました。昨年度からは管理職としても働いています。

甘利
6年目で管理職とはかなり早い出世ですね?若い方々が多い職場でしょうか?
こまつ氏
若いスタッフが多い職場ですね。半数は5年目以下のスタッフです。自分でも、まさかこの年数で管理職を任されるとは思っていなかったです。しかし管理職をするようになってから、物事を俯瞰的にみるよう意識したりと成長に繋がっていると感じています。

今の職場・法人の特徴は?

こまつ氏
昭和20年頃から続く、地域に根付いた法人です。病院以外には関連組織として老人保健施設、特別養護老人ホーム、ケアハウス、訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所があります。
甘利
結構いろいろなサービスを複合的に提供されているのですね?近隣にはどのような病院がありますか?
こまつ氏
地域の周囲の病院は急性期病棟や回復期病棟があり、そこからの転院される患者様も多く、在宅復帰を目指す患者様のリハビリのニーズが高いのが特徴です。また、病院から退院後も、訪問リハビリ、通所リハビリなど在宅でのリハビリ提供も力を入れて行っています。
甘利
なるほど、今では老健や通所リハビリなどの介護分野で働くセラピストも増えてきましたが、その点についてどのようにお考えですか?
こまつ氏
病院だけでなく、介護分野で働くセラピストが増えていることは良いことだと思います。ただ、そこからの情報共有こそが大切だなと思います。病院のスタッフは病院のことしか知らない、老健のスタッフは老健しか知らない、ではなく、お互いに情報共有していくことでそれぞれの組織の在り方を考えるきっかけにも繋がるのではないかと思います。私の所属する法人でも、昨年度に提案し研修として医療と介護での情報共有の時間を取るようにしました。少しずつお互いの組織の理解に繋がると良いなと思っています。

 

就職活動の時は何を重視しましたか?

こまつ氏

就職活動の時は、職場のスタッフの人柄の良さを重視しました。実は臨床実習で人間関係ですごく苦労することもありました。その経験が人柄の良さを重視する要因の一つだったと思います。

甘利
仕事のやり甲斐って、例えば「挨拶が気持ちいい」「笑顔が多い」「話しかけやすい」「身だしなみが綺麗」「経営者との距離が近い」などの要因が非常に基盤となっていて、たとえ良い給料や役職でも、それらが整っていないのは非常に苦痛を伴いますよね?
こまつ氏
その通りだと思います。一見、「挨拶」であったり「笑顔で話す」ということは、出来て当たり前のように思われがちかもしれないですが、なかなか出来ていないことも多くみられます。マズローの欲求5段階説での「所属と愛の欲求」や「承認欲求」に関わってくるところですよね。スタッフ間でのコミュニケーションが円滑に行えていると、仕事にも良い影響があると実感しています。また、当時の課長が就職説明後に、私のところへわざわざ来て下さり、直接「ウチに是非来てほしい。」と声をかけて下さいました。そのことも選択する大きなきっかけになったと思います。
甘利

それは非常に大きいです。「うちに来たいの?どんなスキルなの?何ができるの?」といった上から目線が当たり前の就職活動の中、「来て欲しい」というメッセージは心に刺さりますよね?それだけ、こまつさんの魅力が伝わったのだと思います。

自分が臨床上得意とする分野は?

こまつ氏
TwitterなどのSNSで凄いセラピストの方々を見ているので、得意というほどのものではないですが………(苦笑)。リハビリテーションにおける「目標設定」は結構意識をして取り組んでいると思います。生活期のリハビリテーションは、病院でのリハビリテーションと違い期限が設けられていません。そのため、生活期では利用者様それぞれの目標が具体的に設定されていないとダラダラとリハビリを行ってしまうことにも繋がりかねません。また、セラピストだけでなくケアマネージャー始め他職種の方々とも相談しながら、共有することが大切と思っています。
甘利

その通りですよね。機能を維持することももちろん大事なことですが、いかに自分で管理をしていくように促すかがポイントだと僕も思っています。セルフトレーニング指導は回復期のステージから取り組まないと、いつまでも「やってもらう」リハビリが当たり前になってしまいます。そうすると近所のマッサージ屋さんみたいに「気持ちいいから」「話し相手になってもらいたいから」と言った少し違ったニーズにセラピストが応える形になってしまうと思うんです。社会との関わり合いというのも大事ですが、それをリハビリの目標にしてしまう恐れが生活期以降に起こり得るのが、非常に課題なんだと僕の経験からも思います。

こまつ氏

利用者様にとってのリハビリのイメージが「セラピストにしてもらう」だと、なかなか自主トレーニングの定着などは難しいですよね。利用者様が困った時に自身で解決できるということが、自立の一つの要素かと思います。この点をセラピスト側から利用者様や多職種に発信していくことも必要ではないかと思います。介護保険分野での訪問リハビリでは、ケアマネージャーさんからの依頼から開始につながります。甘利先生が仰ったような「気持ちいいから」「話し相手になってもらいたいから」と思われるリハビリを提供していると、ケアマネージャーさんからもそういった依頼が来てしまうことも考えられます。自戒の念も込めてですが、リハビリを提供する側も、注意して訪問リハビリとしての在り方を考える必要があるかと思います。

甘利
逆に苦手分野はいかがでしょうか?
こまつ氏
これはたくさんあります(笑)。特に挙げると、歩行等の基本動作の動作分析ですね。所属する訪問リハビリではPTの割合が多いため、歩行の動作分析などは、よくPTのスタッフに教えてもらいます。
甘利

OTとしての役割は非常に多岐に渡りますよね?その中で全ての分野を等しくレベルアップするというのはPT・OT・STの中でも一番OTが難しいのではないかと僕は感じていますがいかがでしょうか?

こまつ氏
PT、STに比べるとOTは専門性が見えにくい(わかりにくい)、ということがその要因かと思います。この間、府の作業療法士会の会議の中でも「作業療法ってこういうことが専門だ。と言えるOTはどれだけいるのだろう?」と議題が出ていました。また、自身が所属する組織においてもOTの役割は大きく変化するかとも思います。病院だけでも、急性期病院や精神科のある病院、介護分野や就労支援、発達施設など。その分OTの活躍できる場ややりがいは、たくさんあるのかなとも思います。

 

OTとしての在宅医療に対する考え

甘利
訪問分野での作業療法は特にこれから求められる分野だと思いますが、在宅医療を担うOTとしての考えを聞かせてください。
こまつ氏
2015年の介護報酬改定から、生活期のリハビリテーションにおいて「心身機能」「活動」「参加」に対してバランスよく働きかけることが重要視されるようになっています。OTとしては「活動」と「参加」に向けたアプローチはしっかり関わっていくことが必要だと考えています。在宅のリハビリでは関わることができる時間は、病院でのリハビリに比べ1日や1週間でみると少なくなっています。その中で生活行為向上マネジメントのように、利用者様の24時間365日をイメージしつつ、利用者様本人のしたい生活行為に焦点を当てた介入が必要となってくるのではないかと思います。
甘利
医療機関ではあくまでも「守られた空間」ですから、何かあれば医師をはじめ看護師や多くの医療関係者が助けてくれます。しかし在宅に戻ると、共に生活をされている方や介護をサポートする方はいるとしても、不安は常に付きまとうと思います。だからこそ訪問診療や訪問看護というのは非常に意義が高い。また訪問リハビリも、実際の生活を見られるわけですから、病院とは違った観点でサポートができるという大きな強みがありますよね?
こまつ氏
そうですね。私も以前は病院内でリハビリを行っていたのでよく分かるのですが、病院側はどれだけ患者様の自宅内での生活を考えてみても、あくまでイメージでしかないんですよね。“百聞は一見に如かず”というように、訪問リハビリで実際に利用者様の生活を見させていただけることは大きな強みだと思います。実際の生活を知ることで、機能面に課題があれば機能面へアプローチ、環境面に課題があれば環境面へというように、その課題に対してすぐに直接アプローチできることは訪問リハビリのおもしろさですね。また、実際に関わる時間は少ないため、他職種や家族様も含めた環境面を考慮し、在宅におけるより良いアプローチを考えることも楽しいですね。

 

 

自分を見つめる・高める

PTやSTとの違いは何だと思いますか?

こまつ氏
PT、STと比べてOTは、ICFでの「参加」「個人因子」についての評価が得意とするところではないかと考えています。「参加」に対するアプローチは利用者様の生きがいや役割を持って頂くことに繋がります。利用者様の生きがいや役割は、その方の「個人因子」が大きく関わってきます。OTは利用者様のライフスタイルや興味・関心や価値観などを捉えることが上手な方が多いです。その方それぞれの、「個人因子」から「参加」に対する目標を設定し、「活動」につなげていくことはOTならではと思います。
甘利
なるほど。個人因子から参加へ。素晴らしいベクトルですよね。そういう視点は確かにOTの方々が一番得意とするところかもしれません。このような観点を磨くためにも自分自身が日々成長しなければなりません。自分を高めていくためには何をしていくことが大事だと思いますか?
こまつ氏
自分がどうありたいのか目標を具体的に決めることと、現状の自分を客観的に知ることだと思います。そうすると、目標とする自分から、現状の自分を比べ、足りていないところを、研鑽していく必要があります。以前は、がむしゃらにというか、特に目標を決めずに働いていました。昨年度に、自分のやりたいことは何なのか、どういうことを生きがいとしているのか、どんなことでモチベーションが上がっているのかを考えるようになりました。自分を知ることが自分を高めることに繋がっていくのではと思います。

学会発表や研究開発に興味は?

甘利
自学を高めるツールはたくさんあります。例えば学会もその1つです。学会発表や研究開発に興味はありますか?
こまつ氏
今までは学会発表や研究は行ってきませんでした。すごいハードルが高そうな気がしていました。ただ、今は組織におけるリーダーシップやマネジメントに興味があり、それにかかわる発表や研究はやってみたいなと思っています。
甘利
なるほど、スペシャリストの分野からジェネラリストの分野に、職場でも求められる役割が変化して来たのに合わせて、学習の方向性を変えていかれていますね。素晴らしいです。今後はジェネラリストかスペシャリストと、どのようにキャリアアップをされていかれますか?
こまつ氏
訪問リハビリにおいてはまずはスペシャリストを目指すことが必要と考えています。在宅でのリハビリは、整形疾患、脳血管疾患、内科系疾患、精神疾患等の様々な疾患を持つ利用者様に出会います。そのため、スペシャリストとしてどんな利用者様に出会った場合でも、セラピストとして対応できるようにならないといけないと考えています。それと同時に、管理職という立場からも経験や知識が積み重なっていく中で、興味ある分野や得意な分野を見つけ、ジェネラリストとしての分野も伸ばしていくことが良いかと考えています。
甘利
非常に前向きで素晴らしいです。僕も頑張らないといけませんね〜。取得したい資格などありますか(医療に限らず)
こまつ氏
資格ではないですがジェネラリストの勉強のためにも、今後は医療・介護業界のマネジメントを学びに大学院受験を考えています。
甘利
なるほど。最近は経営学修士を目指すセラピストの方々も増えています。そういう多角的な視点を学ぶために、思い切って大学院に進学されるというのは本当にすごい選択だと思いますので、ぜひ頑張って欲しいです。

 

スペシャリストとして、普段の臨床で特に大事にされていることは?

こまつ氏

利用者様の細かな変化を感じ取ることです。地域生活を送る利用者様は、状態が悪化する前に小さな変化(課題)が出てきていると考えています。例えば、転倒していまい、骨折して入院される方は、変化(課題)として実は少しずつ活動量と共に筋力が低下していた、などです。そういった小さな変化を見逃さないことが在宅生活に関わる上で大切だと思います。

甘利
そうですよね。日々少しづつですが小さな変化があって、その中で課題が明確になってくる。その視点がないと在宅医療は特に難しいと思います。昨日と今日では違うんだと、疑った視点が重要ですよね。
こまつ氏
はい。そう思います。
甘利
学生の時にやっておけば良かったことはありますか?
こまつ氏

趣味でも、学業でも、サークルでもなんでも良いので、一つのことに集中して取り組んでおけば良かったと思います。社会人になってから思いますが、学生の頃に何かに集中して取り組んでいた人は、社会人になっても活躍できる人が多い気がします。

甘利
なるほど。自分の性格や趣味などは?
こまつ氏
性格はぱっと見では大人しい性格と言われます。よくよく知っていく中では奥底に熱さがあるとも言われます(笑)。
甘利

こまつさんは熱い志がありますよ、メラメラ燃えているのを感じますもの。

こまつ氏

本当ですか?(笑)なかなか感情を表出することが苦手なので、そういった面を感じて頂けたのはすごくうれしいですね。松岡修造さんみたいな、熱い人って好きなんですよね。自分がそうなれるかっていうのは別かもしれないですが、自分の熱さが、少しずつ周囲に良い方向へ伝わっていけると良いですね。

甘利
松岡修造さんは、熱いですよね。見ていて気持ちが良いくらい。でも熱さの表現の仕方は人それぞれですから、こまつさんの熱さをしっかりと伝えていって頂ければ素晴らしいと思います。趣味とかはいかがですか?
こまつ氏

趣味は音楽のライブやフェスに行くことや、サッカー観戦です。最近は減ってきていますが、よくライブハウスへ行っていました。多いときは年に30~40回程ライブハウスへ通っていたと思います。

甘利

ライブハウスにいかれてる方、多いですよね?仕事とプライベートをうまく切り分けることも大事だと思いますが、時間の使い方で工夫されていることは何でしょうか?

時間の使い方

こまつ氏
よく言われていることだと思いますが、「やらないことを決める」ことを意識して時間を作っています。一つ例を挙げるとTVを見る時間はほとんどありません。ニュースはPCやスマホで確認しています。元々、ドラマやバラエティー番組を見ることが少なかったですが、時間を作るためにと今は見ないようにしています。
甘利
良いですね、やらないことを決めるということは。僕もそうですね。TVは見ないなあ、本当に少しだけ。多分なくても全く困らない。携帯がないのは生きていけないけど 笑。
こまつ氏
また、仕事においてほとんど残業をしていません。家に帰ってからの家族や自分の時間を多くとりたいと思っており、業務が多くなる月末以外はほとんど定時か、残っても30分程度で退勤しています。
甘利

残業への意識というのはここ10年で大きく変化をしたと思います。特にここ5年くらいでは急激に「残業はしない」という風潮になりました。あえて反論をされることを前提に持論を話したいと思います。

僕は「残業って特に若いうちはするべき」って思っています。それは「自分を高めたいなら」という前提です。なぜなら自分の仕事のキャパシティを知らないまま30代や40代に突入したら時間の使い方も努力のやり方も知らないままになる恐れがあると思うからです。時には仕事に真剣に向き合うと残業という形になってしまうと思います。その残業は僕は価値があると思います。僕は20代の時に23時より前に帰宅したことがほとんどありませんでした。でもその経験があったから、今でもマルチに仕事をすることのポイントや、長時間の労働に対する耐性が付いたとも思っています。この方法がベストは思いませんし毎日23時まで残れとも言いません。でも少なくとも勤務終了して1時間、その日学んだことの復習や、明日のための準備のために残業をしても良いのではないかと思っています。(これが残業という定義になるかは人それぞれです)

こまつ氏
そういった時間の使い方であれば残業は賛成です。ただ、そのためには職場の支援も必要かと思います。なぜなら、職場によっては、「業務時間が過ぎれば、長く職場に居らずに、早く帰りましょう。」というところもあるからです。病院であれば、18単位やそれ以上を回って、カルテ記載や書類作成等を行っていると業務時間を過ぎることは多々あると思います。職場での、自己研鑽に対する支援できる環境が整っていなければ、残業としてそのような成長に充てる時間の確保は難しいですよね。私は、残業ではなく自己研鑽として、自宅で管理業務について考えたり、学習の時間を確保したりしています。残業は職場でするものというイメージがありますが、自己研鑽であればどこでもできると思います。
甘利
あとこれは若い人たちによく話していましたが「自分の限界値って知っていますか?」。実は自分の限界値って「もうダメだ」って思ってからまだ当分先にあるんです。僕は自衛隊の時にそれを散々味わいました。学生の頃にスポーツをやっていた時もそうです。自分の時間が欲しいからというのももちろん大事ですが、オリンピック選手になりたいとか、強い体を作り上げたいという時に、定時だけでは無理なんだと思うのです。スペシャリストとして自分を高めるには、ある一定の努力が必要です。そして努力をするということも、自分のキャパシティを知ることも、ある程度限界に近づくことで自分を理解できる。だから反論覚悟で「特に若い時こそ自分の限界値を知って欲しい」と言っています。それはいろいろな方法もあると思いますが、残業という一件敬遠されがちな方法にも目的を持って行うことで意義があるのだと思います。
こまつ氏
仰る通り、スペシャリストとしての自分を高めるには、それ相応の努力や量をこなすことが必要だと思います。私が尊敬する方々も、圧倒的な量をこなしてこられたという話を伺ってきました。しかし、その量をこなす事と、残業とは異なるものではないかと思います。私の職場は、残業については細かく言われるほうかと思います。そのため、私は残業を減らすことで、自己研鑽としての自分の時間を帰宅後に作ろうとしています。限界までというほど、頑張ったわけではないと思いますが、若い間は多少無理をしても大丈夫とは思います。というか、若い間しか無理はできないとも思います。私も今の間に、もっともっと頑張って自分の限界値を知らないといけないですね。
甘利
ありがとうございます。この様な議論は多分みなさんたくさんご意見があると思います。もちろんこれは僕の考えなんで、強要するものではありません。みなさんのポリシーで選択されることが良いと思います。

医療介護分野の昔とこれから

医療介護分野の課題は?

こまつ氏
介護分野では、介護保険制度の基本的な考え方である「高齢者の自立支援が行われていない」ということかと思います。介護保険制度では「単に介護を要する高齢者の身の回りの世話をするということを超えて、高齢者の自立を支援することを理念とする」と記載されています。しかし、環境設定を変更したり、動作指導をすれば行えることに訪問介護が利用されていたりなど、自立に向けたサービス提供が行われていない場面が散見されます。そういった現状を変えていくため、リハビリテーション職ができることには、自立支援に向けたリハビリテーションを意識し目の前の利用者様に関わることや、地域ケア会議に参加するなどが必要ではないでしょうか。
甘利
なるほど。これから特にそう言った視点は改めて重要になっていくと思います。セラピストにとって大事な視点ですよね。

これまでで一番印象的であった臨床はなんでしょうか?

こまつ氏
訪問リハビリで40歳代の頭部外傷の方と関わったことが一番印象に残っています。その方は受傷当初はほぼ寝たきりの状態で、退院された時もADLは全介助でした。そこから、リハビリを重ね、ご家族の支援もあり、数年後に自宅隣の職場まで一人で車いすで通い、職場復帰することができました。リハビリを通して2階にある自室から、自宅の隣の職場までの移動方法を試行錯誤したり、職場内で働きやすいような環境設定や役割を提案したりとADLやIADLだけでなく、就労についても支援させていただくことができた最初の症例だったので、すごく印象に残っています。今でもその方は「新たに○○ができるようになりました!」など、連絡を下さります。
甘利
患者さんと関係がずっと続くことは、生活期や介護分野、在宅分野に従事する醍醐味かもしれませんね。

仕事以外にどのような活動をしていますか、またそれはなぜですか?

こまつ氏
京都府の作業療法士会で少しずつ役割を頂いて活動しています。内容としては訪問リハビリ研究会の窓口、学術誌の作成、ブロック会への参加・運営等です。どの活動も昨年度に始めたばかりです。法人にて訪問リハビリへ異動となる際に、大学の恩師が訪問リハビリ研究会を開催されていたことを知り、参加することになったのがきっかけです。こういった場を通して、様々なOTに出会うことができ、自分にとってすごく良い刺激となっています。
甘利
そう言った職能団体での活動は非常に大きな意義がありますよね?横の連携は極めて強固になるし、それに最新情報が入って来やすい。
こまつ氏

学ばせていただくことが多いですし、情報もたくさん入ってきますね。ただ、どんなことでもそうだと思いますが、受け身のままでは情報って入ってこないですよね。作業療法士会との関わり自体は数年前からですが、自身に役割を与えて頂くことで、情報を取りに行くことの重要さが分かりました。どんな場所でも、情報を取りにいく姿勢が大切だと学ぶ良い経験になっていると感じています。

 

自分の5年後・10年後は?

こまつ氏

5年後・10年後は訪問リハビリだけでなく、在宅部門の管理・運営の一旦を担うような役割を持っていたいという希望はあります(その際にまだ同法人に属していればですが………)。私自身、MCM協会のセミナーを受講する前後から、管理・運営に興味を持っています。今後、学んでいく中で訪問リハビリだけでなく、在宅部門の管理・運営ができれば面白いなと思っています

甘利
ありがとうございます。あのセミナーでは、多くの方々に普段触れることが少ない視点を感じて頂けたと思っています。僕ももっともっと多くを伝えて行きたいと思います。

子供の頃の自分に言ってあげたいことは?

こまつ氏

ありきたりかもしれないですが「両親に感謝しよう」ですね。自分が働きだしてから、共働きの両親が、家事をしながら兄弟3人を育て上げていることの凄さが分かりました。

甘利
そうですね。家族や両親への感謝はとっても大事ですよね。素晴らしいです。

最後に若いセラピストに向けて一言!

こまつ氏

私もまだまだ学ぶことが多く、何か伝えられる立場ではないですが…。まずは目の前の仕事に一生懸命仕事に取り組むことが大切ですし、成長の一番の近道ではないかと思います。その中で時折、自分自身に目を向けどの方向に成長するかと考えていけ良いと思います。私もまだまだ若手だと思いますし、一緒にセラピスト業界を盛り上げていきましょう。

甘利
本日はありがとうございました!

編集後記

こまつ氏はまだ20代であるのにも関わらず、非常に将来を見据えた考えをもつ。
そこには、揺るぎない信念ととともに他者と共存するための歩み寄りかたも秀逸だ。
リーダーというのは、権力者ではない。
統率者であり、チームをまとめる役割。
時には厳しいことを言わないといけない、
時には他者の意見をうまく取り入れて素晴らしい形にしていく。
そのバランスを取るには物事を一歩引いてみる、
「俯瞰力」が欠かせない。
その力をすでに20代にして持つこまつ氏に驚かされる。
それは彼自身がこれまで意識して物事を俯瞰してみるようにしてきたからだろう。
当たり前のように今日も、そして明日も日々努力をし続ける彼は、自分も気づかないその底力と魅力をさらに高めていくことになるだろう。
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