人生を語れる教育者を目指して 大学院進学のステップと修了により得た大きなもの 若手セラピストインタビューVol.10-2

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Vol.10-2  理学療法士
西田崇人氏インタビュー 第2回
Vol.10-2
愛知県在住 理学療法士
30   男性 西田 崇人
西田氏の1回目のインタビュー記事はこちらです!

また、これまでの他の方々のインタビュー記事はこちらから!!

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インタビュー リンクまとめ

さて、それでは第1回で相当な反響を頂きました「大学院に進学する上での心構えと得たもの」

今日はそれをさらに具体的に伺って行きたいと思います!!

 

 

 

大学院で学んだこと

大学院に入学するシステムとは?

KoKoRo さて、大学院の話をまた少し掘り下げさせてください。僕が大学院を出ていないので、詳しくは知らないので教えてください。入学する時の流れはどんな流れですか?

西田 学校によっても違うと思います。僕の経験と一般的なお話しをすると、大学院の入学試験は前期は10月です。学部の入試と異なる点は、入試の前にその大学の先生とやり取りをして指導をお願いする必要があります。僕の場合は夏くらいに相談しにいきました。後期が1~3月。でも前期で受験する人は少なく、後期試験に集中する大学院が多いと思います。大学の説明会が8∼11月頃に多い事も関係するかもしれません。

KoKoRo なるほど、大学の先生と繋がることがまずは最初のステップということですね。

西田 はい、通常は勤務先に勤めている大学の先生や学部生時代にお世話になった先生に相談をしている人が多いと思います。僕はそういうパイプがなかったので、大学の教授の先生にメールを送って相談するところから始まりました。自分がやりたい研究のことやこれまでの臨床などをお伝えし、弟子入りを志願するような感じでした。

KoKoRo 結構、いきなり連絡取るのも怖いですね。怒られるんではないかと・・・。

西田 緊張しますよね。でも何度か連絡を取っていると「一度、大学で会って話しをしましょう」と言って頂き、大学まで会いに行きました。研究の話を聞いて頂く中で研究に関連する英論文を頂いたり、「プレ研究してみようか」など課題を頂きました。

KoKoRo そうなんですね。でも時間的に厳しいのでは?

西田 はい、だから前期の受験までにそれらの基礎的な知識や研究のベースとなる部分がまとまらず、後期受験が多いのだと思います。僕もそうでした。

大学院行ってからと卒業してからの変化は?

KoKoRo 数々の苦労の末卒業。その後臨床に対してどのような変化がありましたか?

西田 かなり視野が広がったと思います。在籍していたのが、健康支援学研究科ということもあり、今まで考えてこなかった予防や国の施策、保険制度など。本当にこれまで意識していなかった部分が深まったと思います。

KoKoRo 研究そのものについては?

西田 研究計画の立て方から論文の書き方まで研究の一連の流れをしっかりと学ぶことが出来ました。修士論文の要約は英語で書かなくていけなかった事や、入学前の課題もそうでしたが、基本的に参考にしたり学んだりするベースは英論文です。なので、大学院でたくさんの英論文に触れる中で英語への抵抗感は自然となくなりました。

KoKoRo たくさんの文献に触れられこれまでの研究がさらに磨きがかかってくる、というわけですね。英論文は最初は特に抵抗がありますが、徐々に慣れて行きますね。

西田 はい、それに大学院の良い所は、大学先生だけでなく一緒に学ぶ他の医療機関(特に管理者)の皆さんとの繋がりができたことです。すごく刺激をもらいましたし、いろんなことを教えてもらいました。それは非常に貴重だと思います。

修士を得た後の職場の待遇は変わりましたか?

西田 正直、大学院を出た後に職場の給与が増えるわけではありません。「よく頑張ったね」とだけ卒業後に上司にサラッと言われましたが、明らかに僕に対する期待値は変わったと思います。

KoKoRo 給与が増えないというのは、正直大学院を目指す上でのハードルになる部分だと思っています。あくまで自己投資だと。でも短期的には回収が出来ない投資かもしれないけれども、自分のブランドを高めるということや、結果としてそれが回り回って自分の収益に何処かで繋がってくると思っています。これは大学院に限った話ではなく、ほかのセミナーでの知識や手技向上においても同じだと思っています。

西田 はい。正直、修士でも博士でも学位を取ってからが勝負かなと。

KoKoRo そうですね。それを取得した後が大事。最初の通学する段階でイメージができていないと「ただ取得しただけ」となってしまいがちです。

西田 実は、その点は大学院の先生も心配しているんです。修士を取った後のビジョンが大事だと。最初の大学院の先生との面談の時に「君は修士を取ってからどうしたいんだ?」と聞かれている人もいるそうです。修士を取ることがゴールではなく、その先の目標を達成する為の一つの道のりであると思います

KoKoRo そうですよね。

西田 家族に対しても、修士を取ってから収入に跳ね返らないと納得してもらえない。職場の後輩も自分の大学院での学びの様子を見ている。だから大学院を卒業してから後輩からも相談がよくあるんです。その時はさっきのように「なぜ大学院に行きたいのか?」という目的をしっかりと確認しています。学歴コンプレックスを解消するためなど、進学そのものが目的化してはいけないと思います。

どのくらい大学院に所属されていましたか?

西田 一般的には2年ですが、僕が通っていた大学院は長期履修が認められていますので、最長4年まで通う事が出来ます。社会人は3年で修了する方が多いです。

KoKoRo 入学する段階で選択するのですか?

西田 はい。僕は3年コースを選びました。3年間で講義20単位、研究課題10単位の計30単位。ペースとしては1年次に週に3回程の講義に出席し、2年次は週に1回の講義とゼミ、3年次はゼミのみで研究のまとめと論文作成を行いました。単位を取るペース自由なので人によって様々です。

KoKoRo 常勤で働きながら、また家庭も持ちつつ大学院に進むというのは、時間の使い方が本当に鍵になってきますね。

西田 はい、自分でタイムマネジメントするように本当に心がけていました。家庭の時間もあったので、仕事の時は早朝や家族が寝た後に、平日休みの時は、妻が働いていて娘が保育園に行っている時間にデータの解析や論文を読んだりしていました。

KoKoRo 家族と過ごす時間も大切いしながら学業も進めていくのは本当に想像以上に大変だったでしょう?今後は博士課程も視野に入れていかれますか?

西田 いつかは、と思っています。まずは修士で学んだことを現場に活かしつつ、研究テーマを深めて、いずれは進学も考えて行きたいと思います。

医療現場での組織管理

管理職への意識

KoKoRo 今の職場では、どんどん活躍の期待が高まってくるとは思いますが、管理職に対しての興味はありますか?

西田 はい。管理職には非常に興味あります。

KoKoRo 最近は管理職になりたくないという若い方も多いです。言い方が悪いですが「割りに合わない」と。忙しい上に、多くの手当が付くわけでもない。でも西田さんはなぜ興味を抱いていますか?

西田 別にこれまで管理を学んだわけでなく、年齢とともにそういう意識になってきたのかもしれません。スペシャルな面だけでなくジェネラルの面が必要だと思っています。

KoKoRo なるほど。

西田 管理職になって、今まで自分が思ってきた改善点を自分の方法でチャレンジし、もっと良い職場にして行く仕事がしたいと思っています。例えば教育面とか。

KoKoRo なるほど、具体的には?

西田 教育ってステレオタイプの教育が一般的じゃないですか?

本来は共通する教育も大事だけども、もっと職員個々に応じ「カスタマイズした教育」を提案するべきだと思っています。

KoKoRo 素晴らしい。セラピストは職人気質で「こういうやり方なんだ」「この知識をつけて」など、悪くいうと「先輩からの一方通行の教育」が主流だったかもしれませんね。もちろん、基本的なことはその教育方法が間違っているとは思いませんが、ある段階からカスタマイズして行く必要がありますよね。

西田 はい、僕は3年目くらいからは少なくともそういった教育にシフトするのが良いかなと思っています。それによって、後輩たちの自主性が生まれてくるのだと思います。

教育方法

KoKoRo 教育は色々なやり方があると思います。「役割を与える」という意味ではどのようにお考えですか?

西田 医療業界はヒエラルキー型が多いですよね。だからプロジェクトベースも効果的なんだとは思います。でもそのプロジェクトベースでも「普段の上位者がプロジェクトの管理をするとその中でまたヒエラルキーが生まれてしまう」思います。

KoKoRo なるほど。それは非常に納得がいきます。せっかく小さなプロジェクトを作っても、そこをコントロールしているのがいつもの部長さんだったら、若い人は意見なんか出しにくい。

西田 はい。

KoKoRo 僕も本当にそう思っていて、以前の医療機関でもエンパワーメントを重視した組織づくりを提案していました。プロジェクトも、若い方々にリーダーになってもらい部長さんたちには影で支えるだけにする。うすると若いリーダーの顔つきが変わって責任感を持って取り組むようになる。

西田 そうですね。エンパワーメントは本当に必要。セラピストはある意味マニュアル通りは得意かもしれません。でも自分で考えて進むのが苦手。他にも「褒める」のも良いのですが、もっと手前で「声をかけるだけ」でもその後輩たちは変わっていき自信がついてくる。

最後に

悩みは?

KoKoRo そろそろ時間が2時間を超えてきそうです。非常に有意義な時間を本当にありがとうございます。西田さんは悩みはありますか?

西田 そうですね。現在はリーダーという役割ですが、管理職ではないんです。だからずっとモチベーションを保つのが大変だったかな。

でも、無いものをねだっても意味がない。今やれる事をやるしかないと。

そういう意味でも大学院や他の活躍されている方々と一緒にいたりすることで少し気が楽になったんです。管理職には興味があるので、マネジメント側に回ってみたいですね。その立場になってみないと分からないことも多いはずです。

だから自分がその立場になったときに自分が今思っている課題を解決できるのかチャレンジしてみたいです。

KoKoRo 本当に素晴らしいです。

10年後のイメージは?

西田 大学の教員になりたいですね。一方的な講義をするのではなく、現場でしっかりと臨床ができる人材を育成したい。医療人としてどう働くかという倫理観みたいなことも教えていきたいです。

KoKoRo それは、臨床もしながら大学の講師を、ということですか?

西田 臨床は少し継続もしたいですが、その時は教員に専念したい。大学の授業外でも学生と向き合って、人生についてや社会人になることについてなども教えていければと思っています。

一歩を踏み出すときの勇気はどうやって出すのか?行動に移すには?

西田 家族や後輩から影響を受けることも割とあります。認定理学療法士をとった時に後輩から「次は大学院ですね」って言われて、進学を後押ししてくれたんです。

周囲に目標を口にする事で、僕も目標に背を向けることは出来ないし、周りも僕の背中を押してくれる。

KoKoRo 良い関係性をいつも構築されているのですね。では、その後輩・若い子達にメッセージを最後にお願いします。

西田 「色々と考えていることがあったら、人に話すことが解決の道筋になる。もし、自分ができなくても次の人に繋がって行く。だから相談しながら歩みを進めていこう」

KoKoRo 本日は素晴らしいお話を、本当にありがとうございました!

西田 ありがとうございました!

編集後記

大学院というのはブランドなのか?
それともただの学びの場なのか?
「大学院に進学すると箔がつく」
「大学院で勉強することが何かに生きる」
など、本来の進学の目的からやや外れた人たちも少なからずいる。
また
「大学院って一部の本当に勉強の好きな人がいくところ」
「家庭があると進学は絶対に無理」
と、諦めてしまっている人たちもいる。
しかし、結婚前から両親の後押しも、奥様のご理解もあり、「人生のビジョン」に沿った進学をしている西田氏は、それらのややマイナスのイメージを一蹴する。
将来は「人生の価値」を教えられる大学の教員になりたい。
これはアカデミックな分野を教える教育の場で、倫理観や人生観、社会人としての資質そのものを向上させたいという気持ちからだ。
しかしそれらは現状はカリキュラム上ない(またはごく僅か)ため「時間外」となる。
西田氏は「それでも良いから、学生としっかりと向き合いたい」と述べている。
「教育というのは一方通行ではなく、カスタマイズされたものが本来の教育ではないか」
そう言葉にするのは、とても手が掛かることを理解した上で、その手間を惜しまず一番後輩や学生にとって身になることが何かを追求した答えなんだと思う。
「自分に厳しく、他人に優しく」
それは西田氏が大学院で深めた「隠れたスキルアップ」かもしれない。

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