
これまでの経歴と就職活動
KoKoRo「それでは、インタビュー始めます!緑川さん、今日はよろしくお願いします。」
緑川「よろしくお願いします!」
経歴と職務内容
KoKoRo 今日は、X県から愛知県まで来て頂きありがとうございます。こちらは実家があるんでしたっけ?
緑川 そうです。生まれも育ちも愛知県なんですが、養成校を卒業してからX県に就職しました。
KoKoRo そうなんですね。STとしては、もう中堅からベテランという立ち位置かと思いますが、今はどのような場所で勤務されているのですか?
緑川 もともとケアミックス型の中小病院で勤務していました。それから回復期や通所リハ、訪看ステーション、サ高住と色々なステージを経験して来ました。
KoKoRo STで通所リハって、最近は増えて来ましたけど、まだまだ少ないですよね?それも専従ですか?
緑川 いえ、通所リハと訪看ステーションを半分づつです。
KoKoRo 通所リハではやはり嚥下障害の方が対象ですか?
そうですね。失語の方などもいらっしゃいますが、やはり嚥下障害の訓練が主になります。通所リハ全体の2〜3割くらいだと思います。
KoKoRo 私も通所リハ経験者ですが、やはりそのくらいの割合でした。私の経験は、超急性期以外はほぼ全てのステージを経験しました。
緑川 特に在宅に関わることが最近増えて来ました。それはやはり嚥下障害へのアプローチが、在宅生活でのかなり重要なポイントだからだと感じます。
KoKoRo わかります。僕も訪問リハを行っていますが、在宅での嚥下障害は本人も介護者を悩ませます。病院では医師がいて看護師も栄養士もリハもいて、全体で嚥下障害にアプローチしていますから、かなり管理された状態での生活です。それから、一気に介護者と週数回しかこない医療者に委ねられるわけですから。介護保険サービスを使用しても、在宅で生活していると、食事は少なくても1回以上は家族が介入することになりますから。在宅に帰った瞬間に食事形態やトロミなどの課題にぶつかります。それはいくら退院時指導などしていても、やはり介護者だけではやりきれない部分もあるのだと思うと、介護者の不安は計り知れないですね。
緑川 そうなんです。だから僕は通所リハや訪看で見ていてその役割の重要性を強く感じています。なので、本人様・ご家族だけでなく、看護師さんや介護福祉士さん、ケアマネさん等他職種の方々への支援も含め、地域の方々をトータルで支援していきたいです。また、様々な職種の方々が嚥下障害の支援に参入して来られる中、STとして今後は特に重度の方への対応が大切になると考えています。
県士会の役員になったきっかけは?
KoKoRo X県の言語聴覚士協会への役員には、どのような経緯でなられたのですか?
緑川 現在の会長と以前から同じ部局で仕事をしていたのですが、その方が、会長に推挙されるに辺り、すぐに「じゃあ、緑川君は理事ね!」と有無を言わさず任命されまして…。非常に経営感覚に優れたで、決断が早い。私としては、他にふさわしい方は多くおられると思いましたが、この経験から得られるものは多いと考え引き受けました。
KoKoRo 素晴らしいですね!!でも、有無を言わさずといっても、実力がないのに任命はされないでしょうから、色々な面で認められているってことだと思いますよ。
緑川 そうですかね〜 (照)
県士会のこれからは?
KoKoRo 率直に伺います。県士会って、正直いま岐路に立っていると僕は感じています。それは、良い活動をしていてもその活動の魅力が十分に伝わっていないから。症例発表もなんとなく「やらされている感じ」もあって質問者もいつも限られていて、それでいて若手のスキルアップというのは非常に厳しいのではないかと。こんなこと役員さんの前で言ったら怒られてしまうと思います・・・汗。 でも、率直にどうでしょうか?
緑川 ご指摘はごもっともです。学会発表は、それはそれで大切なので残すべきと考えます。ただ、若手のスキルアップの手段というのは、もっと柔軟であって良いと思います。学会や研修会に来ただけで満足して、明日からの臨床に生かされていなければ、それはすごく勿体無いし意味がない。参加者がもっと、失敗談や悩みを含めた自らの意見を表出できる場所があると良いですね。また、県士会というのは学術的な事業だけでなく、啓発やネットワーク作りなど様々な事業を担っています。これに携わること即ち、事業運営に携わることも大きな意義であると思んです。この経験は、自らの職場にも大いに還元できます。そうすると、職場と職能団体の間で、良い循環が生まれ、双方にメリットが生まれる。そういう、メリットを特に若手の方々へは伝えたいですね。なので、学術的な研修だけでなく、事業運営に必要な、例えば“マネジメント”や“リーダーシップ”のような研修も少しずつ、提案できればと考えています。
KoKoRo さすがです!!なんか聴き入ってしまいました。これからの未来に向けて、県士会の役割や、さらなる活動をとても発展的に考えていらっしゃる。
「よそ者」雰囲気から得た、他者との関わり方
KoKoRo そういえば、もともと愛知県の方でしたよね?それなのにX県まで就職しに行ったというのは、どうしてですか?
緑川 奥さんの実家がそっちにあったというのがありますね。妻も仕事をしています。それで、そのまま残ることにしました。
KoKoRo 僕とほとんど一緒ですね?なんか親近感が湧いちゃいます(ワクワク)。やっぱり、共働きのセラピストは多いですね。
緑川 僕の妻は医療関係者ではないですが、彼女のやり甲斐のある仕事をしていく中で僕だけのことで転職したり、異動したりすることは避けたいと考えていました。だから、仮に他で良い転職のお話を頂いても、断って来ました。家庭がやはり大事です。
KoKoRo 素晴らしいですね。僕はもともと転勤族でしたから、すごく妻を連れ回しました。札幌に7年一緒に住んでいましたが、東京や千葉に行った時は計3年くらい単身赴任。愛知県に引っ越して来て一緒に住んでいても、それこそ6時半には家を出て22時くらいまで帰ってこない日が4〜5年くらいありましたから。家族といる時間は大切にしたいところですね。
緑川 はい、もともと愛知県の出身でしたから、最初X県に行った時は知り合いもいないので「よそ者」雰囲気を勝手に感じてました(笑)。行く場所行く場所で初対面からのスタートなので、それはキツイですよね。だから、若いころは結構辛かったです。臨床実習なんかで遠方から来た学生のその心細さが分かるので、色々とサポートしたい気持ちに自然となっちゃいますね。余計なお節介かもしれませんが(笑)。
KoKoRo いや、素晴らしいサポートです。もし緑川さんが僕の上司やスーパーバイザーだったら、すっごく安心して頑張れますよ!!学生や新入職員はただでさえ不安です。慣れていない土地だから。歩くだけで気を使う。
緑川 本当にそうです。先輩になるほど、その感覚を忘れてはいけないと思っています。だからこそ、私の方から「コミュニケーション」をとることが大事だと強く思っています。
KoKoRo 声を掛けれられると、すっごく嬉しいですよね。雰囲気も、もしかしたら「言葉も違うところ」で、その地域の方々に声をかけられたら嬉しいに決まっていますよね。
緑川 特にSTって「レア職種」じゃないですか?だから地域でも少ないし相談できる人も少ない。県士会も活動しますが、個人的にもこの問題にチャレンジするためのネットワーク作りをしたいと思っています。
日々の勉強について
KoKoRo よく本を読まれますか?
緑川 はい、結構読みます。今日も名古屋で何冊か買いました!
KoKoRo 僕も結構買って読む方です。でも付箋紙とかでベタベタ貼るのを最近やめたんです。
緑川 どうしてですか?
KoKoRo それが目的化してしまって、あんまり実は頭に入っていないというか。1冊の中でテーマは1つで良いと思っているんです。そのテーマが分かれば他はもう良いかなって思ってしまいます。
緑川 じゃあ、結構早く読めますね?
KoKoRo はい、かなり早いですよ。でも研究とかになるとそうはいかない。しっかりと読み込まないといけないし。緑川さんは、どんな勉強法ですか?
緑川 私は、臨床では「目の前の患者さんの必要性に対して勉強をして来ました」。つまり、目の前の患者さんに全力で向き合うということです。その人が困っていることをしっかりと調べて、すぐに解決できるようにするという毎日で、それが勉強でしたね。その時には、結局無駄に思えたことも、何年か後に活きてくるんですよね。結局、無駄な勉強なんて無かったです。
KoKoRo 最近、STの領域では嚥下障害に随分ニーズが偏っている、という意見もありますが、どう思いますか?
緑川 確かに偏りがありますよね。ただ、利用者さん側に立つと当然とも思います。毎日生活していく中で、困っているからニーズがあって。まずは、求められたことに結果を出さないと、“やりたいこと”はやれないんじゃないかなとも思います。ニーズの1つとして嚥下障害ももちろんSTに対して期待があるとは思いますが、やはり包括的にその患者さんを診る必要があると思います。
KoKoRo そうですね。地域に出れば出るほど、そういう「その人全てを診ていく」という考えが大事になって来ますね。
これからは
KoKoRo これからの活動は?
緑川 まずは今まで通りしっかりと臨床を頑張っていきたいと思います。あとは、特に若い方や女性の働き方、そして人財育成を学んでいきたいです。その学びを職場や職能団体に還元していけたら良いなと思っています。だからこそ、KoKoRoさんみたいなちょっと変な人(笑)と知り合えて、すごく刺激的でした。
KoKoRo なんか、嬉しいです・・(笑)。変態ですからね、基本。変態なりに頑張って行きたいと思います!まだまだたくさん聞きたいことがありますが、話題は次回に持ち越しにさせてください!それでは今日はありがとうございました!!
緑川 ありがとうございました。
編集後記
30代で県士会の役員というのは、結構辛い面も多いと思う。
重鎮の先生や、長いこと役員をやっている方など、たくさんの「シガラミ」があると思う。
しかしその中で、会長さんとともに新しいことにチャレンジしていくという姿勢が、
とても強く感じられた緑川氏。
X県のSTの方々は幸せだなって本当に思いました。
何かを変えていくということと、良き伝統を継承するということは
同時に行わないといけない。
でも時代の移り変わりで、良き伝統の継承の割合は、極めて少なくて良いとも思う。
どんどん若い方が「変化にチャレンジ」をしていってもらいたい。
改めてそう感じたインタビューだった。